かしぶち哲郎
ソロライブレポート


6月21日(土) 新宿日清POWER STATION 19:00〜



 SEは予想通り「Collage d'amour」(『Fin』収録曲のインスト・メドレー)。
メンバー(G,Sax,Key,B,Drの5人編成)が現れ、黒いシャツを着たかしぶちさんが中央のマイク・スタンドへ。そう、今日はヴォーカリスト・かしぶち哲郎の10年ぶりのライヴなのだ。

 大陸的なリズム・アプローチと重厚なシンセ・サウンドでライヴは幕を開けた。
 「♪はーだいろー・・・」、力強い一風変わった「S・Ex」というちょっと意外なはじまり。その後も間を置かず、黒いドレスを着たきれいな女性コーラス・小林ふみえ嬢が登場し、「もう一つの明日」「柔らかいポーズ」、最新ソロ作『Fin』から「 オブジェの花」「恋のためらい」「Deux cields」と立て続けに演奏。
 「恋のためらい」はボサノヴァ調の軽いアレンジになっているなど、どの曲もレコードとはひと味違ったアレンジをほどこされている。が、かしぶちワールド独特の可憐で官能的な魅力は決して薄らいでいない。レコードでの打ち込みリズムと、ライヴならではの生のリズム・セクションとでは、それだけで大きな差が現れる。メトロファルスのボッシさんとバカボン鈴木さんのリズム隊のグルーヴ感が凄い。上品にうねっていて、様々な音楽エッセンスを取り込んだかしぶちワールドとうまくハマる!!打ち込みを同期しつつも、感触は生バンド・サウンド!!

 なんでもっと早くやってくれなかったんだ(T_T)、と思う。

 今回のライヴの照準は『Fin』の曲を演ることと、新バンド、トウキョウ・ローズのお披露目。『Fin』の曲が生で聴けるのは死ぬほど嬉しいのだが、肝心の『Fin』がもう廃盤になっているので、会場での販売がないのがとても残念だ。確かに間の悪いタイミングでのライヴという感は否めないところがあった。

 その後かしぶちさんはアコギを抱えて、「(10年振りの)再開を祝って悲しい歌を(←このねじくれ度がライダーズ!!)」というMCとともに「冬のバラ」。さらに「屋根裏の二匹のねずみ」「Listn to me.Now!」と、名盤『リラのホテル』から3曲続けて演奏。
 ギターを抱えたまま「次にライダーズの曲を演ろうかな」と言って演ったのがなんと「D/P」!!かしぶちさんのアルペジオ主体のアコギと、古川昌義さんのガットギターのみによる、シンプルながら味わい深い演奏!!予想していなかった選曲にちょっと驚く(かしぶちさんの詩ではあるけれど)。続く「花のイマージュ」はかしぶちさんのギターの弾き語り。2コーラス目で、新バンド、トウキョウ・ローズの看板娘・上田みゆき嬢が登場し歌声を披露。僕がずっと胸に抱いていた、かしぶちさん好みの声とは全然違うタイプのヴォーカリストだったので、ちょっと意外な気がした。
 間を開けずにラジオやノイスまみれのSEと前奏曲的なインストが流れ、いったん引き上げていたバックのメンバーもふたたび配置に。そして「トウキョウ・ローズ!!」というかしぶちさんの叫び声とともに、8ビートのシンプルなロック・ナンバーへ。バカボンのチョッパー・ベースが冴えている!!ところどころに昭和歌謡のメロディや、エスニカンな旋律が織り交ぜられ、新たなるかしぶち・ワールドという印象を受ける。みゆき嬢をフューチャーした、かしぶちさんとのツイン・ヴォーカル曲で、「♪幸せさがし苦労選んでも、きっと見つけたい、つかみたい」というような歌詩の新曲であった。
 続いての「BOY」もみゆき嬢をフューチャーしての演奏。  そして、この後MCでは、「ムーンライダーズ、ソロ活動、トウキョウ・ローズ・・・、あ、アートポートというのを忘れていましたが(場内爆笑)、4つの仮面を持つ男。七色まであと少しですが。あ、七色仮面って知っています?」という、年代がわかるおしゃべりで会場を沸かしたまではいいが、「ソロ活動はいいや、今年はトウキョウ・ローズにかけます。」という早くも問題発言・・・。10年ぶりにライヴ演ったかと思ったら、もうソロ活動は凍結?喜びもつかの間、ふたたび冬の時代の到来である(^^;)。



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