discography
■ムーンライダーズ ディスコグラフィー
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#TOCT8011

Fin
~めぐり逢い~

かしぶち哲郎
Tetsuro Kashibuchi

(1993)

Original Release 1993.05.26

Disc Number (CD) TOCT-8011

Label East World

Manufacturer TOSHIBA EMI

 

  1. Roman d'amour~恋愛小説~
     作曲・編曲:かしぶち哲郎
  2. 恋のためらい
     作詞:芹口希理子 作曲:かしぶち哲郎 編曲:Michel Legrand
  3. 彼女と彼
     作曲・編曲:かしぶち哲郎
  4. Deux Ciels~ふたつの空~
     作詞:岩室先子 作曲・編曲:かしぶち哲郎
  5. オブジェの花
     作詞:芹口希理子・かしぶち哲郎 作曲・編曲:かしぶち哲郎
  6. ある夏のマリアージュ
     作詞:岩室先子・かしぶち哲郎 作曲・編曲:かしぶち哲郎
  7. Egoiste
     作詞・作曲・編曲:かしぶち哲郎
  8. Noel a Paris~パリのクリスマス
     作曲・編曲:かしぶち哲郎
  9. Fin~めぐり逢い~
     作詞・作曲:かしぶち哲郎 編曲:Michel Legrand
  10. Collage d'amour
     作曲:かしぶち哲郎

Produced by Tetsuro Kashibuchi

COMMENT

〜愛と偶然の戯れ〜
かしぶち哲郎[ムーンライダーズ]7年ぶりのソロ・アルバム。
愛と官能に満ちた大人のラブ・ストーリー。

DATA

 

Original Release

●1993.05.26 (CD) TOCT-8011 EASTWORLD/TOSHIBA EMI

 

Re-issue

●1999.04.01 (CD) MGCD-1075 Media Ring

●2013.09.25 (CD) TOCT-95224 EASTWORLD/UNIVERSAL MUSIC (SHM-CD)

 映画音楽やプロデュースで、本格的なヴォーカル・アルバムからは遠ざかっていたかしぶちさんが、「彼女の時」から約7年振りに完成させた通算3枚目。この作品は3つの要素~(1) 映画音楽・TVドラマのサウンドトラックで培ったインストゥ ルメンタル曲。(2) 映画音楽の巨匠、ミシェル・ルグランのプロデュースによるヴォーカル曲。(3) かしぶちさんプロデュースによるヴォーカル曲。~から成り立っており、かしぶちさんのソロ・ワークスの集大成ともとれる大作。

 このアルバムはまず「Roman d'amour~恋愛小説」と名づけられた3拍子のインストゥルメンタル曲で幕を上げる。続く「恋のためらい」は、「Fin」以前に手がけた「さよならをもう一度 サウンドトラック」に収録されていた「LUNA」というインストゥルメンタル曲に、デュエット相手の芹口希理子が詩をつけたもの。ミシェル・ルグラン・オーケストラによる重厚で美しいサウンドと、ミシェル・ルグランの超絶ピアノ・プレイが圧巻の名曲!!ミシェル・ルグランはさらに、6分に及ぶアルバム・タイトル曲「Fin」も美しいオーケストレーションで花を添えている。

 アルバム内容的にもこの2曲が核になっていることは確かだ。この2曲に挟まれるかたちでかしぶちさんプロデュースの歌曲たちが散りばめられている。フラメンコ調あり、シャンソン風あり、ジャズあり、地中海風ありetc その音楽的エッセンスが、これ以前にないかたちのものばかりなのにも驚かされる。デュエットやコーラスには先述の芹口希理子、新井昭乃、寺本りえ子etcを起用。いわゆるデュエット形式というよりは、かしぶちさんのヴォーカルを引き立たせる役目を担ううえでの女性ヴォーカルという面が大きいように思える。

 これらの歌曲たちの要所要所に、さらにインストゥルメンタル曲が絡み、全体的には恋愛小説をテーマにしたミュージカル風な内容にまとめ上げられている。アルバムの終わりを飾る「Collage d'amour」はまさにこのアルバムの総集編といった感じで、各曲の印象的なフレーズたちが次々にフラッシュバックして終わってゆく。そして幕を下ろすのも「Roman d'amour~恋愛小説」の旋律である。ミュージカル的というよりは映画的なのか藻知れない42分だ。

 作詩はかしぶちさんのほかに芹口希理子、岩室先子が手がけているが、実にドラマティックで官能的な世界を漂わせている。余談だが、「ムーンライダーズの夜」に収録された「永遠のエントランス」も「Fin」の延長上のものだと言えると思う。
 残念なことは、ヴォーカリストとしてのブランクが7年間あったということなのか、「彼女の時」ほどのヴォーカルの存在感が感じられない点。とは言え、かしぶちさん独特のアンニュイでまろやかな歌声以外に、このアルバムにはまる歌声があるとは思えないのだが。

 あともうひとつはかしぶちさんのドラミングが聴けない点である。ミシェル・ルグラン・プロデュース曲が生ドラム(ドラムはかしぶちさんではない)を使用している反面、ほかの曲のリズムはすべて打ち込みなのだが、この打ち込みリズムの音色の薄さを感じてしまうのである。アルバム1枚分を聴きおわると生ドラムならもっとしっくりくるのになあ、というもの足りなさを感じてしまうのは僕だけなのだろうか?

                               Kazutaka Kitamura