discography
■ムーンライダーズ ディスコグラフィー
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#COMPACTRON49

Everybody's in Working Class

The SUZUKI

(1997)

Original Release 1997.07.15

Disc Number (CD) compactron-4

Manufacturer METROTRON RECORDS

 

  1. BARRY AND THE COAL CRACKERS
     作詞・作曲:鈴木慶一
  2. 朝日のない街 (We're Gotta Get Out Of This Place)
     作詞・作曲:Mann-Well 日本語詞:鈴木慶一
  3. TRACKER(探索者)
     作詞・作曲:鈴木博文
  4. A BLUE COLORED WOMAN
     作詞・作曲:鈴木博文
  5. 燃えつきた家
     作詞・作曲:鈴木慶一
  6. IRON RAIN
     作詞・作曲:鈴木博文
  7. ROMEO,JULIET & FRANKENSTEIN I
     作詞・作曲:鈴木慶一
  8. NIGHT WALKER
     作詞・作曲:鈴木博文
  9. VICTORIA
     作詞・作曲:R.Davies 日本語詞:鈴木慶一
  10. 高架線上の魔人達
     作詞・作曲:鈴木博文
  11. ROMEO,JULIET & FRANKENSTEIN II
     作詞・作曲:鈴木慶一
  12. I DON'T WANT TO TALK ABOUT IT(もう話したくない)
     作詞・作曲:D.Whitten 日本語詞:鈴木慶一
  13. BACKSTAGE PASS
     作詞・作曲:鈴木慶一

Produced by THE SUZUKI

COMMENT

この世はすべて労働者階級
The SUZUKI(鈴木慶一×鈴木博文)1st Album

DATA

 

Original Release

●1997.07.15 (CD) compactron-49 METROTRON

 

「円熟が聴かせる大人のロック魂と、その新たなる闘争宣言」

 鈴木慶一・博文兄弟によるユニット、その名もTHE SUZUKIのファースト・アルバム。新曲のほかにライヴ音源や2枚のEPを盛り込んだ全13曲。ほとんどベスト・ アルバム的内容とも言えるのかもしれない。

 内容的には大きく分けて3つに分けることができる。まずひとつめにライヴでおなじみとなっている、慶一さんの日本語詩によるカヴァー・シリーズ。とりわけ「 Victoria」を「ビクトリ屋」と歌ってしまう遊び心が良いと思わない?圧巻なのは「I Don't Want TO Talk About It(もう話したくない)」。ライダーズやソロで の魅力とはまったく違う、ブルージーで乾いたバンド・サウンドによる、せつなさ究極系の大人のロック・バラード!!サビの「我が Heart Oh Oh Heart」の部分 は「湾岸 Heart」と聴こえるようで実に心憎い。しかしこれぞまさしくミュージシャンとしての円熟が生む、極上の胸の痛さではあるまいか。

 ふたつめに博文さん主導による楽曲たちの存在。基本的にまず楽曲ありきのひとなので、ソロでのスタンスと変わらないものといえるし、事実、クレジットを観る と博文さんひとりでほとんどが録音されたものも何曲かある。ただ後ほど触れる慶一さんの楽曲とリンクする曲がないわけではない。「Night Walker」では「幽霊に なれたら 給料なんていらない」という、ここ数年の幽霊シリーズ?最新型のフレーズが飛び出したりするなど、ライダーズの曲などにもリンクしてゆくかのような 独特の「詞心」が充分に堪能できる。慶一さんの詩とはまったく違うアプローチをしているとも言えるので、比較してみても面白いかもしれない。しかし、最近の博 文さんの歌は脂がのっていて、実に聴き惚れてしまう。これまた円熟の味である。ところで「A Blue Colored Man」でベースを弾かれているのはなんと慶一さんで ある。博文さんとはこれまたひと味違う、丸みのある音が印象的。ここらへんを比較して聴くのも楽しい。

 そしてみっつめに慶一さんである。今回のアルバムでどうしてもいちばん先に目がいってしまうのが、「BARRY AND THE COAL CRACKERS」や「燃えつきた家」「 BACKSTAGE PASS」といった新曲たちの存在であろう。

 思えばライダーズがファンハウス移籍後、原点回帰的、回想的なモードが色濃く出たのはご承知の通りだ。これにはひと足お先に今世紀を総括してしまおうかのよ うな、そんな精力的な印象を受けたものだが、今回の新曲はライダーズの楽曲よりも、慶一さんのパーソナルな部分により踏み込んでいるところが実に興味深い。た とえば「BACKSTAGE PASS」に出てくるA君があがた森魚さんであったり、「燃えつきた家」も実際のエピソードを発端にして書かれている。僕は今回、慶一さん自身 の青春時代を封じ込めた何曲かを生んだことによって、ここ数年の回想モードの方向性はいよいよ一段落かな?という印象を受けた。新境地へのホップ・ステップ・ ジャンプへの地盤は固まった感じがするのである。

 その証拠に「BARRY AND THE COAL CRACKERS」ではこう歌われている。

どうにもならない 帰れない 諦めきれない R&R Love&Peace
夢(夏)に戻ろう Barry And The Coal Crackers

 夢に戻るのは決して現実逃避ではない。むしろその逆だ。新たなる闘争宣言といってもいいかもしれない。「明日のことはわからない、どうなってもいい」という 不安や投げやりな気持ちを抱えつつも、もはや僕らは前に進むしかないのである。  そして極めつけは「BACKSTAGE PASS]。さんざん憧れ続けた Backstage Pass だけれど、いまもう一度自分に問いかける「Backstage Passって何?」。  先日、NHKの「真夜中の王国」に出演した際に慶一さんは、ほかの職業のひとたちのように、特別な立場ではなくミュージシャンを演りたい、というようなことをお っしゃっていた。 「Backstage Passって何?」。

 もちろん、Backstage Passはそれだけの意味ではないだろう。僕らが常日頃ありがたがている価値観にすら疑問符を投げかけるような問題提起。Noということだけ がロックではないけれど、現状には甘んじてはいけないという、究極の名フレーズである。実に痛い終わりかただ。そして、それができちゃうから慶一さんは凄い! !

 余談だけれど、今回のアルバムを引っさげたライヴでは、慶一さんの歌声が実に素晴らしかった。ここ数年では間違いなくベストである。ヴォーカリスト・慶一さ んがいよいよ本調子になってきたようで、実に今後が楽しみなのだ。

 今世紀中になにやらやらかしてくれそうなライダーズへの布石を含め、あらゆる意味で円熟したミュージシャンの強みを感じさせてくれる名盤である。

 Kazutaka Kitamura