おニャン子クラブ全盛時の後藤次利時代の後、2枚のシングルの次に、突然88年5月に出された鈴木慶一作・編曲のシングル「ちょっとFallin'Love」、8月初旬の「抱いてあげる」に続いてリリースされた、全編鈴木慶一プロデュースの、彼女の4th.アルバム。前年から野田幹子で組んでいた黒田日出良に、ディレクターが変わったことで、渡辺美奈代・鈴木慶一時代が始まりました。 シングルだった「ちょっとFallin' Love」は、フィル・スペクターの名作クリスタルズの「THEN HE KISSED ME 」を下敷きにしてますし、最初と最後に入っているタイトル曲では、ドリーミーなエコーをかけたり、ドゥー・ワップ風のコーラスを入れるなど、打ち込みがベースだけど、キラキラした色彩の、夏を感じさせるアメリカン・ポップス基調のアイドルポップス・アルバムです。「フライト・レコーダー」でも、この録音について書かれていますが、やりたい放題やっています。
この路線は渡辺美奈代にも合っていて、新しい路線を手探り状態だった3rd.アルバムとその後のシングルの中途半端さを脱し、絶好調だった秋元康&後藤次利時代の勢いには及ばないまでも、作品的には、私がライダーズ・ファンであることを割り引いても、これと次のアルバムがピークです。当時も、おそらくコアな渡辺美奈代ファンよりは、歌謡曲も聞くライダーズ・ファンの方が喜んだアルバム。
鈴木博文、鈴木さえ子、鈴木智文、中原信雄、矢口博康など、ライダーズ・ファミリーの人たちが曲を書き、作詞にも、元タイツ(元シネマの一色進、メトロファルスの光永巌のバンド)の滋田美佳世、元ベスト・クラシックス(カーネーションの矢部浩志、LGOの鶴来正基もいたバンド)、元OM(鶴来とのデュオ)の蓮田ひろか(旧名、細田博子、この直後に覚和歌子に改名)と、周辺の人たちを起用してます。そして、もちろん渚十吾。 本作では、本間哲子と浜田理恵が全曲に、誰だかすぐわかってしまう存在感の強い、最強のコーラスで入ってます。
野田幹子のアルバムと同じく、参加ミュージシャンが曲によってミドルネーム付きの表記だったり、その曲のねらいをうかがわせる変名表記があったりと、クレジットでも遊んでます。
シングルで出ていた曲は、別ヴァージョンで収録されてます。
text: 古澤清人 Kiyohito Furusawa
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