前作に引き続き鈴木慶一(&黒田日出良)プロデュースによる5th.アルバム。アソシエート・プロデューサーとして、渚十吾となっています。
前作と、ほぼ同じソングライターとミュージシャンによる充実作。シングルとして、「抱いてあげる」(88,8)と、「いいじゃない」(88 、11) がリリースされていました。「いいじゃない」のB面だった「ラストダンスはあなたに」までは、蓮田ひろかのペンネームが使われてますが、アルバム中の曲では覚和歌子のペンネームが使われている、という作詞家細田博子の節目のアルバムでもあります。(最近は沢田研二のレギュラー作詞家です。このアルバムのSPECIAL THANKSでは、細田博子になっています) 音作りは、前作の延長線上にありますが、12弦ギター、マンドリン、ブズーキなどの複弦楽器が大半の曲で使われ、効果的です。スライド・ギター、スパニッシュ。ギター、バンジョーなども曲によって使われ、打ち込み部分も含め、音色について、かなり練った上で作られたであろうアルバム。
「フライト・レコーダー」によると、さんざん凝って前作「MY BOY」を作った後に、渡辺美奈代のコンサート(ビデオ、LD「ZENBU MINAYO」として出てます)を見に行って、そこでの客を見て、「俺たちは、何てマニアックにレコード作ってたんだろう。こんな奴らのために」と思い、ますますやる気を出してマニアックに作ったアルバムということです。
もちろん、ここでの主役は、渡辺美奈代です。歌唱力がそれほどあるわけではありませんが、歌唱力というのは、アイドル・ポップスの場合、プラスにもマイナスにも作用するわけで、それよりも大事なのは、声質です。重くなく、エキセントリックでもない渡辺美奈代というシンガーがいたからこそできたアルバムです。
「志村けんのだいじょうぶだぁ」や、「新婚さん、いらっしゃい」を経て、一児の母になっても、テレビで彼女の姿は見れますが、ライダーズ・ファンだけでも、傑作ポップスアルバムを作った歌手としての彼女も覚えていてほしいものです。 2枚のシングルのAB面4曲は、すべて別ヴァージョンあるいは別ミックスで収録されています。
text: 古澤清人 Kiyohito Furusawa
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